|
【はじめに】
手術中の患者の状態把握に、バイタルサインチェックは必須である。中でも血圧値は、術中の麻酔薬、疼痛等により容易に変動するため、正確な測定値を把握することが重要である。
麻酔中はマンシェットを装着したままであるため、手術終了後にマンシェット装着部位を観察すると、皮下出血や圧迫痕が発生している場合が多い。
そこで、マンシェット下に保護材を巻くことで患者の皮膚を保護し、皮下出血や圧迫痕を軽減できるのではないかと考え、様々な保護材を使用した研究を行ったのでここに報告する。

【研究方法】
調査1
(1)研究期間:平成18年10月
(2)対象:スタッフ10名
(3)使用保護材
| A
|  |
オルテックス
(ギプス用綿包帯)
綿、レーヨン |
| B
|  |
ストッキネット
(メリヤス編みチューブ包帯)
綿 |
| C
|  |
ワイペル
(サージカルタオル)
レーヨン、ポリオレフィン |
| D
|  |
スイトール
(不織布ガーゼ)
レーヨン |
(4)方法
収縮期血圧値の平均値を比較する。
スタッフに肌触り、耐久性等の使用感を調査する。
(5)条件
イ)被験者は5分間のベッド上安静とする。
ロ)測定は、同側上腕にて行う。
ハ)保護材未使用、保護材A、B、C、Dの順に血圧測定を行う。
調査2
(1)研究期間:平成18年10月〜平成19年1月
(2)対象:全身麻酔下で2時間以上の手術を受けた患者75名
平均年齢35歳(19歳〜76歳)
(3)使用保護材:調査1−(3)同様
(4)方法:保護材の使用、未使用をランダムに選択し、術中2.5分間隔で血圧測定を行う。術後に皮膚損傷の有無・程度を調べる。

【結果】
調査1
マンシェット下に保護材未使用時の血圧値を基準とし、いずれの保護材も収縮期血圧値の差は5mmHg以内であった。
〈スタッフの意見〉
・未使用…圧迫感が強く、痛い。冷たい。
・保護材A…肌にやさしい。使用頻度により素材自体が薄くなる。
・保護材B…肌触りが良い。耐久性あり。着脱容易。
・保護材C…肌触りは、未使用よりは良いが、A・Bと比較すると、硬め。耐久性あり。しわがややでき易い。
・保護材D…肌触りは、未使用よりは良いが、他と比べると薄い。しわができやすい。
調査2
| ・未使用… |
皮下出血出現者8名(53%)
圧迫痕や上腕内側に一部点状出血を認めた患者は3名(20%)
上腕内側から外側にかけて多数の皮下出血を認めた患者は5名(33%) |
・保護材A…皮下出血出現者3名(20%)
| ・保護材B… |
皮下出血出現者2名(13%)
上腕内側に一部点状出血を認める程度であった。 |
| ・保護材C・D… |
各6名(40%)
主にしわがよる部分に点状出血が認められた。 |

【考察】
一般に、マンシェット下に保護材を使用し血圧測定をすると、上肢に血液がうっ滞してしまい正しい値がでないと言われているが、調査1により、保護材使用、未使用時の収縮期血圧値の差はほとんどみられなかった。
↓
保護材を使用しても血圧測定値に誤差は出ないと考える。
保護材未使用で血圧測定後の上腕を観察したところ、皮膚のたるみがマンシェットの締め付けによってできたしわに挟まれ、皮下出血が出現していた。
特に上腕内側には点状出血が多くみられた。上腕外側にはマンシェットの端の部分に、圧迫痕が出現していた。
また、麻酔下での血圧変動に伴い、加圧力がより多くかかることも皮下出血の原因と考えられる。
保護材Aでは、保護材未使用と比較すると、皮膚損傷の出現率は低下している。
調査1のスタッフ意見より、肌触りは良いが耐久性に疑問が残る。
保護材Bでは、皮膚損傷の出現率は低下し、調査1より肌触り、耐久性共に良い結果が得られている。また、使用後に繰り返し洗うことができ、コスト面においても優れている。
保護材C.Dのようなしわのより易い素材では、長時間マンシェット下に装着することで、保護材自体のしわがマンシェットと皮膚の間に空間をつくり、加圧力がより多くかかる。よって、点状出血や圧迫痕が出現しやすくなったと考えられる。肌触りは未使用よりは良いが、長時間の使用は避けたほうが良い。
皮下出血は圧迫により生じるが、いずれの保護材を使用しても出現率は低下したものの、皆無にはいたらなかった。そのため、保護材と併用し、患者個々の皮膚損傷リスクとなる情報収集を行うことで、更なる予防に繋がるのではないかと考える。

【まとめ】
血圧測定時の皮膚損傷予防に、マンシェット下の保護材使用が有効であることがわかった。特にストッキネットは、皮下出血や圧迫痕の予防ができ、肌触り、耐久性にも優れている。術中の患者の状態把握に、連続的な血圧測定は必須であるため、それに伴う皮膚損傷を最小限にできるよう、マンシェット下のストッキネット使用を今後も続けていきたい。
|